「いのちを考える」研究プロジェクト
所長・松田和憲

【グループの研究テーマ】

 私たちは、生物学的意味で用いられる「生命」という用語ではなく、もっとトータルな意味、すなわち哲学的・倫理的・宗教的な意味をも含む言葉として昨今広く使用されている「いのち」という用語を用いて、その「いのち」全般を研究の対象とする研究グループです。

 その中でいま重点的に取り上げている問題は、ここ20年ほどの間に急激に進歩発展を遂げている、いわゆる先端医療技術に関する倫理的諸問題ということになります。これは最近大きな話題になり、私たちに対しても「生と死」に関する決断を迫る事柄になりつつあります。そこで私たちの研究テーマについて具体的に言えば、「いのち」の始まりと終りについて、病気の診断や治療、中でも臓器移植など「いのち」の質に関するさまざまな生命医科学技術による操作と適用の問題等々、これらの諸問題を考察していくと言うことになります。しかし、私たちグループの時間的・力量的制約を考慮し、当分の間は一つの研究分野に限定して研鑚を続けていく予定でおります。それは従来の方法論のように、数多い「いのち」に関する諸問題を対象ごとに独立、分離させて考察するのではなく、「いのち」をトータルに捉えていく学問分野を指し、たとえば生殖・臓器移植・末期ケア・安楽死・患者の「知る権利(Informed Consent)」などの根底にある全体像としての人間の価値判断や倫理的決断のあり方を考察する学問的分野、すなわち「バイオエシックス(生命倫理)」と呼ばれ、まったく新しい研究分野を意味しております。

しばらくは、この問題に関する研究を続けていくつもりでおりますので、関心のある方はご一報ください。

 

【2009年度研究計画】

○学生のいのちに対する意識と実態調査(2)
 ・大学生のいのちの意識と実態調査の結果と考察の整理・論文作成
○幼児のいのちに対する意識と実態調査
 ・アンケートおよびインタビュー用紙作成
 ・集計、整理


メンバー

所員

松田 和憲

研究員

大豆生田 啓友

鈴木 公基

客員研究員

安達 昇

三浦 一郎

長井 英子

吹抜 悠子

石谷 美智子

小高 千恵

加賀谷 真梨Dwight P. Davidson


2009年度の活動報告

第1回研究会 04月15日(火) 18:20〜19:40
発題者: 大豆生田 啓友  所員
鈴木 公基  所員
テーマ: 「命を大切に思う気持ち」の諸要因の分析
討議内容: 鈴木研究員より「いのちを大切に思う気持ちに影響を与えるもの」の分析結果「自分の命を大切に思う心」と「一緒にいると安心できる人がいる」との関連は密接である、「他人の命を大切に思う心」も同様である。
男子では「殺人などのゲーム」が「いのちを大切に思う心」妨げる傾向がある。またゲームが「人によっていのちの重みは異なる」との観点と結びつく。
女子では、「自分の命の大切さ」と「超越したもの」概念が結び付いたのは予想外だった。過激なゲームの問題点が浮き彫りになった。

第2回研究会 05月27日(水) 18:15〜19:30
発題者: 大豆生田 啓友  所員
テーマ: 1.アンケート結果を分析し、まとめたものを紀要に掲載する事
2.今年度の計画
討議内容: 前回のアンケートを基にして新たに大学生を対象に「生命感の把握」についてのアンケートを考える
・声明は漠たる概念でどのような具体的概念を与えるか
・どのような事を知りたいか。効果的な質問を各自で考えることにした。

第3回研究会 06月24日(水) 18:10〜19:40
発題者: 鈴木 公基  所員
テーマ: ナラティヴ研究による「いのち」探求の可能性
討議内容: 「いのち」探求の一方向としてのナラティヴ(質的研究)実例として、やまだようこ氏による阪神大震災で友人をなくした人に2度インタビューし、経験を物語ってもらうことによる内的変化の調査紹介。これを学生の実情にどう応用できるか、実際に学生対象のインタビューを試み(鈴木氏)次回にデータを検討する。

第4回研究会 09月30日(水) 18:20〜20:00
発題者: 鈴木 公基  所員
大豆生田 啓友  所員
テーマ: 「いのち」を研究する上で
討議内容: 「いのち」に関して鈴木氏が大学生にインタビューを試みたが不成功であった。「いのち」が漠然としすぎたテーマで、「いのち」と関連するテーマは家族の内面処理が出来ておらず、回答を拒否された。どのようなインタビューが有効であるかについて討議。研究案として、「自分及び他人の命は大切か、いのちの重さに違いはあるか」など、予めアンケートに答えさせてからインタビューする。(大豆生田ゼミ学生対象)

各年度の活動:

2014年度

2013年度

2012年度

2011年度

2010年度

2008年度

2007年度

2006年度

2002年度