「いのちを考える」研究プロジェクト
所長・松田和憲

【グループの研究テーマ】

 私たちは、生物学的意味で用いられる「生命」という用語ではなく、もっとトータルな意味、すなわち哲学的・倫理的・宗教的な意味をも含む言葉として昨今広く使用されている「いのち」という用語を用いて、その「いのち」全般を研究の対象とする研究グループです。

 その中でいま重点的に取り上げている問題は、ここ20年ほどの間に急激に進歩発展を遂げている、いわゆる先端医療技術に関する倫理的諸問題ということになります。これは最近大きな話題になり、私たちに対しても「生と死」に関する決断を迫る事柄になりつつあります。そこで私たちの研究テーマについて具体的に言えば、「いのち」の始まりと終りについて、病気の診断や治療、中でも臓器移植など「いのち」の質に関するさまざまな生命医科学技術による操作と適用の問題等々、これらの諸問題を考察していくと言うことになります。しかし、私たちグループの時間的・力量的制約を考慮し、当分の間は一つの研究分野に限定して研鑚を続けていく予定でおります。それは従来の方法論のように、数多い「いのち」に関する諸問題を対象ごとに独立、分離させて考察するのではなく、「いのち」をトータルに捉えていく学問分野を指し、たとえば生殖・臓器移植・末期ケア・安楽死・患者の「知る権利(Informed Consent)」などの根底にある全体像としての人間の価値判断や倫理的決断のあり方を考察する学問的分野、すなわち「バイオエシックス(生命倫理)」と呼ばれ、まったく新しい研究分野を意味しております。

しばらくは、この問題に関する研究を続けていくつもりでおりますので、関心のある方はご一報ください。

 

【2011年度研究テーマ】

 2010年度の研究目標であった,「大学生の『いのち』に対する理解について――その広がりと深まりとの観点から」については,インタビューデータの収集がおおむね終了した。しかしながら,収集されたインタビューデータについての十分な分析を進めることはできなかった。このことから,本年度は,2010年度に収集したインタビューデータの分析を行い,大学生におけるいのちの理解のあり方についてまとめを行う。
 その他に,年度当初の研究会において,本グループとして,いのちに関してより多角的な観点から理解と考察を深める必要性や,先の震災とその後の課題に対していのちの観点から検討を進める必要性について意見が提起された。このことから,本年度は単一のテーマを限定せずに,研究グループ内外のメンバーからいのちに関連する研究を広く募り発表を行ってもらい,研究グループならびに各メンバーのいのちに関する理解の深化を図るとともに,東日本大震災にまつわる課題に対していのちという観点からどのような研究が可能なのかということについて検討を行う。
 これらの活動を通して,いのちを考えていく上での現代的な課題について改めて探ると同時に,来年度以降,より集中的なプロジェクトとしていのちに関するどのような研究を展開していけるのかについて検討していきたいと考えている。


メンバー

所員

松田和憲、鈴木公基

客員研究員

石谷美智子,長谷川伸江,長井英子,安達昇,三浦一郎,加賀谷真梨、小高千恵



2011年度の活動報告

第1回研究会 04月19日(火) 17:00
発題者: 鈴木公基 所員

テーマ: 今年度の計画

討議内容: 学生への「いのち」に関するインタビュー(鈴木)は以後も続行して,まとめをする予定をいかに立てるか.
 「震災」という大変事に関して,宗教は何ができるか.「いのち」をどう解するか.
第2回研究会 05月24日(火) 17:05-18:40
発題者: 加賀谷真梨 客員研究員

テーマ: 西表島での現地調査,老人へのヘルパーの諸問題

討議内容: 政府主導の(家族とは別の)「新しい親密圏(他者の生/生命への配慮,配慮,関心によって形成,維持される「人間-人格的関形成」で排斥されていないという感情の空間)の創出」には,伝統的に人間関係の密な沖縄の離島における,福祉現場での現実的な諸問題(特別に信頼されているリーダーによって成立しているボランティア団体が今後リーダー交代後にこれまで通りの活動が可能か?).  「家族」の存在による外部の「福祉」を阻止する諸問題
第3回研究会 06月21日(火) 17:05-18:45
発題者: 長谷川 伸江 客員研究員

テーマ: 緩和医療における心理的ケア

討議内容: 緩和ケアにおいては,患者の「全人的な痛み」をケアする姿勢が重要であり,心理的ケアが重視されつつある.
今回は,死を前にした患者の「語り」に注目し、その個別的な病の意味や医療者と患者の関係性を討議した.
また,ケアを提供する側である医療者のモーニングワークの重要性についても検討した.


各年度の活動:

2014年度

2013年度

2012年度

2010年度

2009年度

2008年度

2007年度

2006年度

2002年度